アサリやホタテなど普段食べている貝も毒化することを知っていますか?
ハチやムカデ、ヘビやキノコなど、私たちの身近にも毒をもついきものはたくさんいますが、普段よく食べている貝が毒化することを知らない人は多いかもしれません。
主にアサリやホタテなど2枚の貝殻をもつ貝(二枚貝)がもっている毒のことを貝毒と呼んでいます。
今回は貝毒について、貝毒とは、いつ毒化するのか、食べている貝は安全なのかなどを解説していきたいと思います。
貝毒とは
主に二枚貝のもつ毒を貝毒といいます。
ただ、二枚貝は、通常では毒を持っていません。そして、貝毒を自分自身で作り出すこともできません。
では、なぜ毒化するかというと、毒をもつエサを食べ、それを体の中に蓄積することで毒化します。
貝には大きく分けてホタテなどの二枚貝とサザエなどの巻貝があります。
二枚貝は海水を吸収し、海水の中にいる植物プランクトンをこしとって食べます。一方、巻貝は主に肉食性で歯があり、海藻などをかじって食べます。
毒化の原因は、二枚貝がエサとして食べる植物プランクトンにあります。
毒化の原因となる毒をもつ植物プランクトンは、主に渦鞭毛藻類と呼ばれる植物プランクトンです。
普段は主に毒を持たない植物プランクトンを食べていますが、この毒をもつ渦鞭毛藻類が大量に発生し、たくさん食べて体の中に毒を蓄積することにより毒化します。
ちなみに、夜の海で光り輝く夜光虫も渦鞭毛藻類の一種です。
貝毒の種類には、原因となる植物プランクトンの種類により、主に手足のしびれや頭痛、重傷の場合は運動失調や呼吸困難を引き起こす麻痺性と下痢、吐気、腹痛などを引き起こす下痢性の毒があります。
症状は30分から数時間で現れます。
現在のところ貝毒に対する治療薬はありません。
また、貝毒の大きな特徴として、火を通しても無毒化されるわけではないため、注意が必要です。
いつ毒化するのか
では、いつ二枚貝が毒化するかということですが、毒化を予測することはほぼ不可能なのが現状です。
毒化する場合は、二枚貝の生息する海域に有毒の植物プランクトンがたくさん発生している時です。
有毒の植物プランクトンは、基本的には休眠状態で海底に存在しており、二枚貝のエサにはなりません。
ある時期になると水温上昇などの環境変化が有毒の植物プランクトンに適した条件になり、休眠状態から目を覚まし、増殖します。
増殖に適した条件は水温だけでなく、塩分や太陽の光、増殖に必要となる栄養の量など様々な要因が影響します。有毒の植物プランクトンは複数種類いるため、それぞれの種類で増殖に適した条件は異なります。
また、植物プランクトンは、潮の流れで流されることで広がったり溜まったりします。
そのため、有毒の植物プランクトンが発生していても潮の流れによって毒化するかどうかが左右されます。
さらに、貝自身の状態として、代謝の良い時期では有毒の植物プランクトンをたくさん食べても、すぐに排出されるため、すぐに無毒となります。
逆に代謝が悪い時には長い期間毒化した状態が続きます。
このように、いくつかの条件が重なり合い、毒化するため、これを予測することは難しいことがわかると思います。
普段食べている貝は安全なのか
貝毒はいつどこで発生するかわかりません。また、また見ただけでは毒を持っているかどうか全くわかりません。
一方、貝毒による被害はほとんど報告されていなく、一般に売られている貝は安全といえます。
貝毒のような有害の物質をもつ食品については、食品衛生法という法律(第六条)で、販売をしてはならないとされています。
そのため、二枚貝を出荷する際には、出荷前に貝毒をもっていないかという検査を行っています。
この検査は、出荷する生産者や各都道府県などの自治体が行っています。
また、有毒の植物プランクトンの発生を事前に予測することは難しいですが、自治体を中心に年間を通して、海域のプランクトンをモニタリング調査し、貝毒の原因となるプランクトンの発生がないか監視しています。
このような検査で貝毒が発生した場合には、出荷を停止するとともに、広報によって注意喚起を行います。
貝毒は、時間の経過に伴って貝の体内から排出されますので、検査によって3回連続でパスするなどの基準をクリアした場合、出荷が再開となります。
スーパーや魚屋などで売られている貝は、このような検査をきっちり行っているため、実際に販売されている貝は安心して食べることができます。
一方、海に生息している貝を勝手に採ってきて食べることは、貝毒を持っている貝かどうかわからないため、危険ですので、その海域で貝毒が出ていないか情報収集することが重要です。
そもそも、ほとんどの場所では、漁業権が設定されているので、貝の種類にもよりますが、貝を勝手に採ってくることは漁業権侵害、いわゆる密漁として違法行為になりますので、控えた方が良いです。
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