近年、「生物多様性」という言葉を日常生活の中でも耳にすることはないでしょうか?
地球環境などを考える時によく出てくる言葉ですが、私たちの生活にも大きく関係しています。
言葉のままイメージすると「いろいろな種類の生物が存在すること」と思う人が多いかもしれません。
もちろんその通りですが、生物多様性の意味するところはそれだけではありません。
今回は、生物多様性とは何か、どのように私たちの生活に関わってくるのかについて解説したいと思います。
生物多様性とは ~3つの多様性~
生物多様性とは、「いろいろな種類の生物が存在すること」も含めて以下の3つの多様性を意味しています。
1.「種の多様性」
2.「種内の多様性」
3.「生態系の多様性」
いろいろな種類の生物が存在することは、1つ目の「種の多様性」に当たります。
特に説明は必要ないと思いますが、細かい話をすると、例えば、高級魚のマグロでも、クロマグロ、ミナミマグロ、メバチマグロなど「種」のレベルで様々な種類が存在するということです。
2つ目の「種内の多様性」とは、同じ種類のいきものの中での多様性です。
例えば、人間であれば、背の高い人、低い人、寒さ暑さに強い人、弱い人など、生物学的には同じ「ヒト」でも、「遺伝子」のレベルで様々な種類が存在することにより異なる特徴をもつものが存在することになります。
種内の多様性が高いと、環境変化によってそのいきものに都合の悪い環境になったとしても、誰かしらが適応し、生き残る可能性が高くなります。
逆に種内の生物多様性が低いと、絶滅の可能性が高まります。
3つ目は、「生態系の多様性」です、そもそも、生態系とは、その場に生息するいきものと水や空気など環境を合わせた空間のことを言います。
つまり生態系の多様性とは、森林、河川、干潟などいきものが暮らす「空間」のレベルで様々な種類が存在するということです。
このように、生物多様性とは、いきものの種類が多いというだけでなく、いきものについての3つのレベルで様々な種類が存在するということを意味しています。
生物多様性と人との関わり
では、生物多様性がどのように私たちの生活に関わってくるのかということを解説していきます。
そもそもですが、私たちの生活に欠かせない衣食住は、そのほとんどがいきものからの恩恵を受けて成り立っています。
例えば、衣類の素材となる天然繊維は、綿や麻などの植物由来のもの、ウール、シルク、レザーなど動物由来のもなど、いきもの由来のものをいいます。
食料については、肉や魚、野菜などそのほとんどがいきもの由来ということはわかると思います。
住居についても、木造住宅や家具など木材の存在が欠かせません。
このように、私たちが生きていく上でいきものの存在は欠かせません。
もし、私たちの生活に欠かせないいきものの数が減ったり、絶滅したりするなどして生物多様性が失われれば、衣食住に支障が出ます。
例えば、2020年7月にマツタケが絶滅危惧種に指定されました。また、クロマグロやニホンウナギも既に絶滅危惧種として登録されています。数が減れば、中々出回らなくなり、もし絶滅してしまえば食べたり利用したりすることはできなくなっていまします。
また、数が減ったり絶滅したりすることによる影響は、そのいきものだけではなく、そのいきものが関わる全てのいきもの、環境に影響を及ぼします。
例えば、ニホンウナギが絶滅すれば、ニホンウナギがエサとしていたいきものの数は増え、逆にニホンウナギをエサとしていたいきものの数は減ります。
また、いきものの種類や数のバランスが崩れることで環境が変化し、生態系にも影響を及ぼします。そしたまた他の種類のいきものが減ったり、絶滅したりする可能性が出てきます。
すべてのいきものは、私たちの把握できていない部分も含めて複雑に関わりあってバランスをとっているため、生物多様性が低くなると直接的あるいは間接的に私たちの生活に影響を及ぼす可能性があります。
近年では、これまでの長い地球の歴史と比べて約1000倍のスピードで種の絶滅が起きていると言われています。
つまり、人間の活動が、生物多様性に大きな影響を及ぼしているということです。
直ちにどの程度の影響が出るかはわかりませんが、このままのスピードで種の絶滅が続くことは自然の流れではないと思います。
私たちの行動で私たち自身の首を絞めないよう、まずは、「生物多様性」ということに意識を向けながら生活していく必要があると考えます。
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