日本には元々棲んでいなかったいきものを「外来生物」といいます。
外来生物が日本に入ってきた理由としては、食用やペットなど観賞用、あるいは輸入品に紛れて持ち込まれるなどがあり、人間の様々な活動によって持ち込まれてきました。
それらのいきものが、何らかの理由で自然界に広がり繁殖して野生化することで、様々な問題が起きています。
今回は、なぜ外来生物の繁殖はよくないのか、外来生物に対する規制、日本に生息する外来生物の例について簡単に解説していきます。
なぜ外来生物の繁殖はよくないのか
外来生物が繁殖することにより大きく以下の3つの問題が発生します。
1. 日本固有種への影響(生態系への影響)
2. 人間への影響
3. 農林水産業への影響
それぞれ簡単に解説します。
1. 日本固有種への影響(生態系への影響)
生態系は、一定の環境の中で様々ないきもの同士が数や種類などのバランスを保つことで成り立っています。
そこに、今まで出会ったことのない外国のいきものが入ってくると生態系のバランスが崩れてしまいます。
特に、日本固有種よりエサを捕るのが上手ないきもの、たくさんのエサを食べるいきもの、戦いや病気に強いいきものなどであれば、外来生物がどんどんと増えていき、逆に日本固有種が減っていくことで、固有の生態系が崩れていきます。
また、日本にこれまでなかった病気が外来生物と共に持ち込まれることにより、その病気に弱い日本固有種に大きな被害を及ぼすこともあります。
最悪の場合、外来生物の繁殖により、日本固有種が絶滅してしまうこともあります。
そして、生態系が崩れることは、間接的に私たちの生活にも影響を及ぼすことになります。
2. 人間への影響
外来生物の影響は間接的なものだけでなく、直接私たちに悪影響を及ぼすものもあります。
例えば、外来生物の持ち込むウイルスにより病気が蔓延したり、外来生物のもつ毒などで危険にさらされたりします。
オーストラリア原産のセアカゴケグモは、現在ほとんどの都道府県で生息が確認されています。
セアカゴケグモに噛まれると、激しい痛みや筋肉のまひなどの症状が現れます。
南米原産のヒアリは、平成29年に初めて日本で確認され、その後、港などで確認されるたびに日本に定着することを阻止するための対応を行っています。
ヒアリは毒性が強く噛まれるとアレルギー反応を引き起こす場合もあります。
一度、定着し繁殖すると、根絶は極めて困難となってしまします。
3. 農林水産業への影響
農業、林業、水産業などの一次産業に対して悪影響を及ぼすものもあります。
外来生物により農作物や産業の対象となるいきものを食べたり、畑を荒らしたりすることがあります。
例えば、動物園でよく見かけるアライグマについて、良いイメージを持つ人も多いかもしれませんが、農業対して大きな被害を及ぼしています。
アライグマは元々、カナダやアメリカなどに棲んでいて、ペットや動物園での飼育を目的として日本に輸入されました。
その後、飼えなくなって逃がすあるいは脱走するなどして自然界に定着し、繁殖するようになりました。
アライグマは夜行性であるため、人間があまり気づかない間に畑の農作物を食い荒らし、大きな被害を受けることが多いです。
2012年のアライグマによる農作物の被害額は3億円以上と見積もられています。
外来生物に対する規制
このような外来生物の繁殖による問題を防ぐため、「特定外来生物法」という法律があります。
特定外来生物法では、問題を引き起こす外来生物を「特定外来生物」とし、特定外来生物を許可なく飼うこと、栽培すること、保管すること、運搬することを原則禁止しています。
また、外来生物を野外へ放す(逃がす)ことや植物だったら植えることやまくことも禁止されています。
ちなみに、野外で捕まえた場合、持ち帰ることはダメですが、その場で逃がすことは規制対象となりません。
これに違反すると罰則があります。例えば、許可なくペットとして飼育した場合でも、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金となります。
見つけたり捕まえたりしても持ち帰ることは控えるようにしてください。
日本に生息する外来生物
私たちの生活に身近ないきものの中でも、外来生物は意外と多いものです。
特定外来生物ではありませんが、日本に生息する身近な外来生物についていくつか紹介します。
ネコ
ペットとして飼っている人も多いと思いますが、一方で野生にも野良猫などたくさんのネコが生息しています。
正確なことはわかっていませんが、ネコは元々日本に生息していないいきものでした。
海外からネズミなどの防除対策やペットとして持ち込まれ、それを逃がしてしまうなどして野生化し、広がっていきました。
地域によっては、希少な日本固有種をエサとして捕獲してしまうなど問題が起きています。
コイ
コイは日本各地の池や川に生息し、日本を代表する魚というイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。
実は、よく見かけるほとんどのコイは元々日本にいたいきもではなく、中国などから持ち込まれたと言われています。
コイはどんなものでも食べる雑食性のであり、比較的水質の悪い環境でも生きていけるため、日本各地に幅広く分布しています。
ヤギ
ヤギも私たちになじみの深い動物ですが、いろいろな所で飼われていると思いますが、小笠原諸島など一部の地域では野生のヤギも生息しています。
家畜として海外から持ち込まれ、野生化したとされています。
エサとして草をたくさん食べることにより、元々生息していたいきものが生きられなくなったり、むき出しになった土壌が海に流れ込むことによる海洋汚染が起きたりするなど、生態系への影響が問題となっています。
日本にはこの他にもたくさんの外来生物が生息しています。
外来生物もいきものとして生きているだけで、全く悪くありませんが、自然界で生きていく上でいろいろな影響が出てしまうのも事実です。
私たちの手で今以上に外来生物の生息を広げないよう、考えて生活していく必要があると思います。
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